Story  樹 第5話

朝。

 

昨日の事を思い出す。

「別れようか。」

 

「でも・・・。」

 

「今まで、悪かった。」

 

 

今までの辛さでか。

涙がでるが、「昨日はごめん。もう、がっかりさせないから。」

とやっとでいった。

 

その後だ。

 

 

 

「結婚しようか。

  どっちかで迷ったけど・・・。

   もう、誰のとこにも行くな。」

 

 

拓真が私を引き寄せる。

 

眠る前のことは、何年も前からため込んだからか、心と体は嬉しいはずなのに涙がでていた。

 

 

朝食の準備為にベッドからでようと拓真をみる。

拓真は、まだ、眠っている。

  

いびきがいつもひどくて、眠れないことも多かったが、昨日の返事はYes・・・。

なんだか、笑ってしまった。

 

 

今日は、オムレツにハートを書こう。

朝日がまだでていないキッチンに立つ。

 

 

おとといからで、いろいろ変わったにも関わらず、行動と心は一緒のいつも道理の朝だ。

と、言えば噓になるのか。

 

レタスのハムサラダに

コンソメスープに

 

オムレツにハート。

 

と、浮かれている私をまた、笑ってしまった。

  

さあ、次は、寝坊の拓真を起こして・・・。

 

 

朝日が眩しくなってきた。

東向きの光の入る部屋で拓真がまだ寝ている。

 

キッチンから寝室に続くカーテンを開け、寝室に。

 

 

まだ寝ている拓真をみて、おかしいな、今日は、笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

【Story】 樹  第4話

住んでいるアパートから徒歩3分位のところで車からおろしてもらい、家に向かう。

冬の寒空のなか、歩いて帰る。

アパートが見えてきた。

冬だからだろうか?

帰りを待ってくれている人がいる部屋の明かりが、暖かく感じられる。

 

彼も、このように、帰って来るんだろうか?

さっき、彼と別れて、元カレの和己と付き合おうとして、軽くなっていた気持ちに何かがよぎる。

 

部屋に帰ると、彼は、友達との久々の再開を喜んでくれた。

が、私は、さっきのことで、少し気が重くなっていて、早めに布団に入った。

 

今、別れれば、こんなに良くしてくれた彼の拓真をがっかりさせ、寂しい思いまでさせてしまう。

それと比べると、このまま、拓真ときちんとつきあっていったほうがいい。

セックスレスは、たいしたことなく感じられた。

さっき、帰るときの部屋の明かりの暖かさをまた、思い出していた。

 

 

次の日、仕事から帰った彼からの一言が

「別れようか?」

だった。

笑顔まで浮かべていた。

 

昨日、食事の時に拓真の知り合いが同じ店にいたようで、それを聞いたらしい。

笑顔は、私が幸せになるんだなという気持ちからだったのだろう。

 

「でも・・・。」

セックスレスのことと昨日の理由で別れないことにした、と、全て打ち明けた。

すると、拓真も、セックスレスのことを打ち明けてくれた。

 

 

若いときに、フランス映画のような恋愛をして、別れた時の痛みが大きかったようだ。

聞いた瞬間『身を守るためにしないわけ?』と思った。

昨日の私の考え事はなんだったんだろうとか。

 

彼が

「今まで悪かった。」

と言ってくれた。

 

さっきまでの憤りが、なぜか涙にかわる。

 

彼が、私を引き寄せた。

 

 

 

その日は、何年ぶりだろう、抱き合ってから眠った。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

【Story】 樹  第3話

第3話
 
 
次の日。
 
部屋に、作り置きの夕食と友達と食事してきます、という書置きをして家を出た。
 
 
待ち合わせ場所に来た、元カレの車のドアを開けると、そこには、以前のままのアンニュイな笑顔の彼がいた。
 
会えて、良かったと、何故だかの安心感の中、食事をして、近況を少し話した。
 
会話の途中でみせる、何か、考えているときの表情も変わらない。
正直、単純には、今までの中で、一番好きになった人だが、時々、何を考えているのか、わからないのは、以前のままだ。
 
 
食事が終わり、車で会話をしていると、顔を近づけてきた。
そして、私の肩を腕をまわす。
 
「あっ」
 
 
5年も、女を休んでいると、敏感になるようで。
感じているのか、
嬉しいのか、
切ないのか、
わからないまま、唇を合わせると、涙が、出てきてしまった。
 
唇が離れて、何もないような心境で、彼の顔をみると、涙に気付いたのか、切なげな表情を浮かべている。
 
 
「今日は、どうする?」
彼の質問に、暫く言葉がでない。
 
 
夜の闇が、二人を隠しているが、何も言えない静寂の中、ふと、空みると、満月だった。
 
今日は、これ位で、自分が一杯なんだな。
と、思うと、これ以上行けないい気がしてきて、
 
 
「ごめん、帰るね。」
と、言葉が出た。
 
彼も、笑顔で、またねと言ってくれた。
 
 
 
 
 
 
 
続く 
 

【Story】 樹  第二話

第二話
 
 
そんな日々の中で、とある日、携帯に電話が来た。
 
彼との食事が終わってからの時間だ。
 
 
最近、着信があるのは、親か置き薬屋の在宅確認とか・・・。
 
彼といる時間が良く、色々な人と疎遠になっていた。 
 
 
名前をみると 
 
 
 
 
元カレだ。 
 
電話には出なかった。
 
 
 
別れて、9年になる。
 
今までで一番好きになった人だが、彼から連絡が来なくなり、理由も聞いたが、やはり、連絡がなかった。
 
 
 
この前、寂しいときに、あいさつ程度のメールを送ってしまっていた。
 
もう忘れている位前だが。
 
 
 
 
そして、電話の後、メールが来た。
 
 
『今日、会いませんか?』
 
 
 
 
流石に、動揺した。
元カレの、声・表情・しぐさ・話口調、全て思い出してしまった。
 
目の前で、ずっと私といてくれた人がテレビを観ている。
切なくなって、彼の近くに行くと、いつもの優しい目で、どうしたのという表情をみせる。
 
こんなに、いい人が、こんなに近くにいて問いかけてるのに、何も答えられない。
 
もっと、繋がりたい。
 
 
と、言えなくて、ただ、彼の肩に手をまわし、胸に顔をうずめた。
 
 
 
 
 
その日の夜は、彼の腕に抱き着いたまま眠ろう、とは思った。
 
しかし、何故、5年位セックスレスかなと、思うと、また、以前からの悩みで悶々としてくる。
そこに、元カレからの連絡からの以前の元カレを好きだった気持ちが、絡んで、彼とベッドに入ったまま、メールをしてしまった。
 
 
 
『明日、食事に行きませんか?』
  
 
 
 
 
続く