【Story】 樹  第4話

住んでいるアパートから徒歩3分位のところで車からおろしてもらい、家に向かう。

冬の寒空のなか、歩いて帰る。

アパートが見えてきた。

冬だからだろうか?

帰りを待ってくれている人がいる部屋の明かりが、暖かく感じられる。

 

彼も、このように、帰って来るんだろうか?

さっき、彼と別れて、元カレの和己と付き合おうとして、軽くなっていた気持ちに何かがよぎる。

 

部屋に帰ると、彼は、友達との久々の再開を喜んでくれた。

が、私は、さっきのことで、少し気が重くなっていて、早めに布団に入った。

 

今、別れれば、こんなに良くしてくれた彼の拓真をがっかりさせ、寂しい思いまでさせてしまう。

それと比べると、このまま、拓真ときちんとつきあっていったほうがいい。

セックスレスは、たいしたことなく感じられた。

さっき、帰るときの部屋の明かりの暖かさをまた、思い出していた。

 

 

次の日、仕事から帰った彼からの一言が

「別れようか?」

だった。

笑顔まで浮かべていた。

 

昨日、食事の時に拓真の知り合いが同じ店にいたようで、それを聞いたらしい。

笑顔は、私が幸せになるんだなという気持ちからだったのだろう。

 

「でも・・・。」

セックスレスのことと昨日の理由で別れないことにした、と、全て打ち明けた。

すると、拓真も、セックスレスのことを打ち明けてくれた。

 

 

若いときに、フランス映画のような恋愛をして、別れた時の痛みが大きかったようだ。

聞いた瞬間『身を守るためにしないわけ?』と思った。

昨日の私の考え事はなんだったんだろうとか。

 

彼が

「今まで悪かった。」

と言ってくれた。

 

さっきまでの憤りが、なぜか涙にかわる。

 

彼が、私を引き寄せた。

 

 

 

その日は、何年ぶりだろう、抱き合ってから眠った。

 

 

 

 

 

続く